建物所有目的の借地とは?(借地権の発生する目的要件)

住宅外構用品、建築資材の展示販売場として期間10年の約束で土地を貸し、その際、展示販売場の一部に事務所用の仮設建物を建築することは認め、プレハブの建物が建てられています。

賃貸期間が過ぎ、私もこの土地を自分で使用する必要が出てきたので、借主に明渡しを要求したら、「建物があるから、借地権が発生し、存続期間は30年になる。まだ明渡しには応じられない」と言われました。

本当に「借地権」が発生しているのでしょうか。建物所有目的の借地とはどういうものでしょうか。

 

本例では、借地の主たる目的は、住宅外構用品等の展示販売場としての使用であって、事務所建物を所有するのは、そのための従たる目的に過ぎないものですので、「借地権」は発生しません。

建物所有目的の借地とは、借地の主たる目的が建物を所有するものであり、だから、存続期間の長い「借地権」として保護されるわけです。

【建物所有目的の借地(借地権)】

借地借家法(または旧借地法)で「借地権」とは、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」をいうとされています。

建物という長期間存続するものを所有するためにする借地であるからこそ、借地権の存続期間は、原則として30年という長いものとされ、それより短い期間の定めは無効とされるのです。

逆に、建物の所有を目的としない借地については、借地借家法(または旧借地法)の適用はなく、短い存続期間でも有効とされます。

ご質問の場合は、建物の建築が認められており、現に建てられているとはいっても、それは、住宅外構用品、建築資材の展示販売場として使用するための事務所として、同展示販売場に付随するものとして建築されるものであり、また、撤去が容易な仮設建物しか建築が認められておらず、現に建てられた建物もプレハブで撤去が容易と思われるものです。

したがって、この場合は、土地の使用目的の主たるものは、住宅外構用品等の展示販売場としての使用であって、事務所建物の所有は、そのための従たる使用目的に過ぎないものと判断するのが相当です。

この場合、借地契約の存続期間は、主たる目的によることとなりますので、住宅外構用品等の展示販売場としての使用期間(設問では10年)が経過すれば、原則として契約は終了し、これに付随する建物も同様に撤去を求められることになります。

【その他問題となる事例】

そのほかに、「住宅展示場」としての借地では、展示されている住宅は、展示用にすぎず、居住等その本来の用途に使用するものではないため、展示住宅があっても建物所有目的とはされません。住宅展示場に事務所が付随する場合は、設問と同様に考えられるでしょう。

ほかに、「ゴルフ練習場」、「バッティング練習場」、「中古車展示場」、「駐車場」、「資材置場」、「ゴルフ場」などの場合には、これらに付随する事務所等があっても、通常は、主たる使用目的は建物所有目的ではないと考えられています。

ただし、タクシー営業のための事務所、駐車場、車庫が一体的に使用されていた例では、建物所有目的であることが明かな事務所の借地権の存続する限り、建物所有目的ではない他の部分の賃借権も存続する、と判断された例もあります。

《参考となる法令など》

借地借家法2条(旧借地法1条)

最判昭42・12・5民集21・10・2545

最判昭50・10・2判時797・103

東京地判平3・11・28判時1430・97

東京地判平7・7・26判タ912・184など多数