管理費等を滞納していた区分所有者が孤独死をしたときはどうすればよいか?

先日、小さい頃お世話になったおじい様からこんな相談を受けました。

A.私達の居住している分譲マンションで、先日、高齢の区分所有者が孤独死をしてしまいましたが、生前から滞納していた管理費や修繕積立金のほか、今後発生する管理費や修繕積立金は誰に請求したらよいのでしょうか。

Q.孤独死であっても、身内の者と疎遠になっているだけで、相続人が存在することもありますから、まず相続関係を調査することが必要です。相続人がいれば、その相続人が包括承継人として、管理費や修繕積立金(以下「管理費等」といいます。)の支払義務を負うのが原則です。相続人がいないか、相続人がいても相続を放棄した結果、誰も相続人がいない場合は、相続人不存在による相続財産管理の手続きをとる方法があります。

【区分所有者が孤独死した後の管理費等の支払い】
区分所有者が孤独死した場合でも、疎遠になっているだけで兄弟姉妹や子供等の相続人がいることも多いと考えられます。この場合、区分所有者が有していたマンションの区分所有権などの財産のほか、滞納管理費等の債務も相続の対象となり、相続人がこれらを包括的に承継することになります。したがって、管理組合は、滞納されている分だけでなく、相続開始後に発生した管理費等についても、相続人に支払いを求めることができます。
なお、相続関係の調査については弁護士に相談するのがよいでしょう。

【相続人の不存在】
亡くなった区分所有者の戸籍等を調査しても相続人が見つからないことがあります。また、相続人が見つかっても、その全員が相続を放棄してしまうこともあります。相続人が存在しないことが確定すれば、相続財産は原則として国庫に帰属することになりますが、戸籍等の調査だけで相続人の不存在が確定できるわけではありません。このため、相続人が存在しないことを確定するとともに、その間の相続財産の管理と精算を行うための制度として相続人不存在による相続財産管理の制度があります。
相続人不存在による相続財産管理の制度というのは、家庭裁判所が選任した相続財産管理人が相続人捜索の公告を通じて相続人を探し出す一方で、相続人が現れるか、相続人の不存在が確定するまでの間、相続財産の管理と精算を行います。したがって、滞納管理費等の債務については、相続財産をもって精算がなされることになります(ただし、相続財産より相続債務が多いときは破産手続きがとられることもあります。)。この相続人の捜索の結果、相続人が判明し、相続人がマンションの区分所有権を相続した場合、精算されなかった管理費等は相続人に請求されることになります。相続人が現れない結果、亡くなった方と特別な縁故があった者(特別縁故者といいます。)にマンションの区分所有権が分与された場合は、特別縁故者に請求することになります。特別縁故者もいないため、マンションの区分所有権が国庫に帰することになった場合は、国庫に請求することになります。
「相続人の不存在による相続財産管理の制度」については、詳しくは後掲設問「相続人が誰もいないとき」を参照してください。

《参考となる法令など》
民法951条~959条