袋地から他人の土地を通れるか?

私は亡父が故郷に所有していた土地を相続しましたが、現地へ行ってみると袋地であることが分かりました。私はゆくゆくはこの土地に住みたいと思っていますが、袋地の通路はどうなるのでしょうか。

袋地の所有者は公道との間にあってその土地を囲んでいる他の土地を通行することができます。通行できる場所と方法は、袋地にとって必要であると同時に周囲の土地におよぼす損害を最小限度に止める範囲内においてのみ認められます。

【囲繞地通行権】

周囲を他人の土地に囲まれたり、公道に接していても公道と土地との間に大きな段差があるなどのために直接公道に出ることのできない土地のことを袋地といいます。

袋地の場合、その土地を囲んでいる他の土地(これを囲繞地といいます。)を通らなければその利用ができませんから、袋地の利用を保障するため、周囲の他人の土地を通行することが認められています。これを囲繞地通行権といいます。

この囲繞地通行権は、袋地の利用を確保するために認められた権利ですから、袋地にとって必要であれば通路を開設することもできます。しかし、周囲の他人の土地に対して少なからぬ迷惑をおよぼすことは否定できません。そこで、通行の場所と方法については、周囲の他人の土地におよぼす損害が最小限となる範囲内でのみ認められることになっています。

【通行料】

袋地所有者に囲繞地通行権があるといっても、周囲の他人の土地を無償で通行できるわけではありません。周囲の土地にとっては、袋地の利用のために通行されること自体はやむをえないとしても、それによってこうむる損害までも甘受しなければならない筋合いはありません。このため、袋地の所有者は、通行する土地におよぼす損害を賠償しなければならないとされます。

なお、この損害の賠償については、通路を開設した場合は、それによって生じた損害を一括して支払わなければなりませんが、それ以外については1年ごとに分割して支払えば足りるものとされます。

【無償通行権】

このように袋地の所有者は周囲の他人の土地を通行するのに通行料の支払いをしなければなりません。しかし、袋地ができた原因が、共有地を分割したためであるときや、土地を分筆したためであるときは、袋地ができることは最初から分かっていたわけですから、無償で通行できるものとされています。もっとも、この場合に通行できるのは、共有物の分割や分筆によって袋地となった土地と一体であった残りの土地にかぎられます。袋地ができたのと関係のない土地に囲繞地通行権の負担をおよぼすのは不公平だからです。

《参考となる法令など》

民法210条~213条