急傾斜地の境界はどこか?

私の家は高台にあり、隣家との間には急な崖があります。隣地との境界は明確でなく、このため、隣地所有者はかねがね崖下までは隣地であるといっているのですが、それにはなにか根拠があるのでしょうか。

崖は高い方の土地に属するというのは、崖地の境界を考えるうえで原則といってよいでしょう。

【崖地と境界】

崖地付近に境界がありその位置が境界杭などによって明かな場合はよいのですが、境界があることが判明していてもその位置が不分明な場合もあります。

崖地の下の土地所有者が勝手に崖地を掘削したり、反対に崖地の上の土地の所有者が崖地上に大きな建造物を造ったりすると、崖地の上の土地が崩落するなどのあそれがあり、危険です。

境界が明かな場合はよいのですが、境界が不分明な場合、このように崖地の管理のあり方によっては一般の平地にはない危険が生じるおそれがあるため、崖地の境界を明かにする必要は、平地の場合にくらべて大きいといえます。

【崖地処分規則】

明治時代に近代国家を樹立するために地租改正条例によって地租改正事業が行われた際、地租を徴収するために土地の所有者と所有地を確定する必要がありました。このため、明治政府は「崖地処分規則」を定めて境界の不分明な崖地の境界を定めました。

具体的には、同規則では「凡ソ甲乙両地ノ中間ニ在ル崖地ハ上層ノ所属トスヘシ其従来ヨリ下底所属ノ確証アルモノハ旧慣ノ儘ニ据置スヘシ」として、境界が崖上にあることが明かな場合を除いては、崖地は崖上の土地に所属するものとしました。

なお、20度ないし25度の勾配のある土地は崖地にはあたらないとされた例があります。

【結論】

崖地の付近に境界があることが明かであるものの、その位置が不明な場合、境界は崖下にあると考えられます。したがって、崖地は崖上の土地の一部ということができます。

《参考となる法令など》

崖地処分規則(明治10年2月8日地租改正事務局別報第69号達)1条

仙台高判昭45・12・16判時631・66