私の土地は袋地です。ここに家を建てようと思ますが、隣地に水道管やガス管などを引くことはできるでしょうか。
袋地に水道管やガス管などを引くのに必要であれば、その土地を囲んでいる他の土地におよぼす損害を最小限にとどめる場所と方法において周囲の土地を使用することができます。
【袋地の利用と水道管などの施設】
周囲を他人の土地に囲まれたり、公道との間に崖などがあるため、直接公道にでることのできない土地を袋地といいます。
袋地の所有者は公道にでるために必要にして、その土地を囲んでいる他の土地(これを囲繞地といいます。)にとって最も損害が少ない場所と方法であれば、周囲の他人の土地を通って公道に出ることが認められています。これを囲繞地通行権といいます。
このように、袋地であっても囲繞地通行権が認められているため、公道との間と通行は可能です。しかし、袋地を十分に利用しうるためには、たんに通行権が認められるだけでは不足です。袋地に家を建てて居住しうるためには、水道、ガス、電気、電話、下水道といった利便が確保されなければなりません。しかし、下水道について、下水道法11条に他人の土地または他人の排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難な場合は、他人の土地に排水設備を設置しまたは他人の設置した排水設備を使用することができる旨の定めがありますが、水道、ガス、電気、電話については他人の土地を使用しうることを定めた法律はありません。そこで、水道管などの施設も囲繞地通行権にもとづいて認められるといわれることがあります。
【囲繞地通行権との相異】
しかし、囲繞地通行権と水道、ガス、電気、電話の導管などの施設との間には、微妙な相異があります。すなわち、公道との間に崖などがあって通行ができないため袋地にあたる土地でも、水道管などの施設については、とくに困難がなく他人の土地を使用する必要がないという場合があります。また、袋地の通行に適当な場所であっても、本管の位置などから水道管などを施設するうえでは不適当であるということもあります。このため、水道管などの施設については、囲繞地通行権そのものの問題ではないとの見解も有力です。
【どのような要件のもとに設置できるか】
袋地への水道管などの施設が囲繞地通行権そのものの問題ではないとしても、袋地の利用を確保する必要のあることは否定できません。また、隣接する土地相互の利用を確保するうえで、土地の所有者に一定限度の制限が加えられるのもやむをえないというのが囲繞地通行権が認められている根本的な理由です。
そこで、囲繞地通行権が認められる趣旨を類推して、袋地へ水道管などを設置する必要がある場合は周囲の他人の土地を使用できるとされています。ただし、設置ことができるのは、水道管などを袋地に引くのに他人の土地を使用せざるをえない場合にかぎられます。したがって、他に方法がある場合、例えば敷地の一方が崖に面していても、崖に導管を設置することができる場合や、たんに他人の土地を使用した方が便利であるというというだけでは他人の土地の使用は認められません。また、設置する場所についても、袋地と公道との間の通路以外により与える損害が少ない場所があればそこに設置するべきでしょう。
なお、水道管などの設置によって、他人の土地の利用が制限されるなどその所有者に損害が生ずれば、その補償をしなければならないと考えられます。
【袋地以外の場合】
このように水道管などの設置については、袋地の通行の問題とは若干性質を異にしますから、袋地にあたらないとしても、通路に水道管などを設置することのできない事情があるときは、やはり他人の土地に与える損害が最も少ない場所と方法において他人の土地の利用が認められると考えられます。
《参考となる法令など》
民法209条、210条、220条
下水道法11条