不動産の取引をしているとたまにこういったケースがございます。
その際どのような事に注意したらよいでしょうか?
Q.代理人と売買するときに注意することとは?
【ご相談内容】
今般、土地を購入することにしたのですが、売主本人は一度も顔を出さず、すべて代理人が代行しています。このまま代理人を通じて売買をするに際して注意しなければならない点があれば教えて下さい。
A.代理人が売主本人から売買を代理する権限を与えられているかを確認する事が必要であり、そのためには、代理人が売主本人からの委任状をもっていることが最低限必要となります。
【代理権の確認】
代理人と取引をする場合には、本人とする場合に比べてかなり危険をともなう事を頭におくことが必要です。
万一、代理人が本人を代理する権限を有していなかった場合や代理権の範囲を超えて取引した場合は、契約は有効に成立しないのが原則です。
したがって、代理人を通じて売買契約を締結しようとする場合には、その代理人が売買につき本当に代理権をもっているということを確認する必要があります。そのために、直接、売主本人に確認することができればよいのですが、そうすることができない場合には、売主本人からの委任状をもっているかを確かめるべきです。そして、その委任状に押印されている売主本人の印鑑が実印であることを印鑑証明書で確認できれば、一応大丈夫であろうとはいえます。
ただ、代理人との契約では、絶対に間違いがないということはありませんので、慎重になりすぎるということはありません。
【表見代理とは】
代理権があると思って契約したにもかかわらず、代理人に代理権がなかったことが判明した場合、本来、本人である売主には売買契約の効力はおよびません。ただし、代理権があると信じて代理人相手に取引をした者を保護する必要があるとの観点から、一定の場合に本人に契約の効力がおよぶことが認められています。
つまり、①代理人に代理権を与える旨表明したが実際には代理権が与えられていなかった場合、②代理人が与えられてた代理権をこえて代理してしまった場合、あるいは、③代理人に代理権を与えたが、その後代理権が消滅した場合であって、相手方が代理人に代理権があると信じたことに正当な理由がある場合には、代理人に代理権があるのと同様の効力が認められるのです。
これが表見代理といわれるものです。具体的には、委任状が交付されていれば、それは代理権授与の表示とみられますし、実印の押してある委任状をもっていた者の代理権を信じて取引したというのは正当な理由があったという重要な要素になります。したがって、取引について、代理人の代理権を疑うべき事情があった場合は別として、委任状や実印そのものが本人の意思にもとづいて代理人に交付されており、これを信じて代理人と契約をしたときは、代理人と名乗る者に実際には代理権がなかったとしても、本人との間に契約が成立することがあるのです。
ただ、そもそも委任状が偽造されたものであったり、実印が盗用されたものであったりした場合などは、本人に契約の効力はおよびませんので、くれぐれも慎重に契約をすすめることが重要です。
【消費者契約法との関係】
このような代理人との契約についても、平成13年4月1日から施行された消費者契約法の適用をうけますので、消費者契約法の契約の取り消し要件に該当する場合には、取り消すことができます。
※最近では地面師の問題がニュースになっておりますが、本人でも実際に本人かどうか?を慎重に確認する必要がある中でやはり代理人というのはリスクはありますね…
《参考となる法令など》
民法99条、109条、110条、112条