連帯保証人と普通の保証人との違い

最近では不動産の売買では連帯保証人を付ける事はほとんどなく保証会社が保証するケースが多いのですが、賃貸の場合はまだよく連帯保証人を付ける事があります。

Q.連帯保証人と普通の保証人との違いは?

【ケース】

私は知人に保証人になってくれと頼まれました。書類をみると「連帯して保証する」と書いてありますし、、保証人欄には、「連帯保証」と記載されています。保証人と、連帯保証人との違いはあるのでしょうか?

A.保証人と連帯保証人とは異なり、後者の方が前者より重い責任があります。実際には、たんなる保証人であることは少なく、ほとんどが連帯保証人とされていますから、この点とくに注意する必要があります。

【保証と連帯保証の違い】

保証も連帯保証も、いずれも本来の借主(主債務者といいます。)の代わりに債務を履行する(借金を支払う)点ではかわりがありませんが、普通の保証人は、借主が借金を支払えないときに初めて責任を負い、その意味で二次的な責任を負うのにすぎないのに対し、連帯保証人は借主と同じ立場で責任を負い、その意味で一次的な責任を負う事になります。

具体的には、①貸主が主債務者より先に保証人に債務の履行を請求してきたとき、②貸主が主債務者より先に保証人に強制執行をかけてきたとき、③保証人が数人いるときの保証人の責任の範囲において違いが生じてきます。以下それぞれ説明しましょう。

【貸主が保証人に債務の履行を請求してきたとき】

たんなる保証人の場合は、貸主が、主債務者より先に、保証人に債務の履行を請求してきたときは、保証人は、貸主に対して先に主債務者の方に請求してくれと主張することができます。この主張のことを「催告の抗弁」といいますが、まさにこのことが保証人が二次的な責任しか負わないことを端的に表しています。

ところが、連帯保証人の場合にはこの催告の抗弁はできません。

先に述べたように連帯保証人は主債務者と同じ立場で支払義務を負うものです。したがって、貸主は、主債務者、連帯保証人のいずれに対して先に請求するかを自由に選べることになり、取り立てのしやすい方(一般には資力のある方)に請求できることになっているのです。

【貸主が保証人に強制執行をかけてきたとき】

貸主が、主債務者および保証人に対し債務名義(判決、和解調書、強制執行受諾文言のある公正証書などのように強制執行によって実現できる権利のあることを公に証明する文書)を有しているときには、貸主は保証人、主債務者いずれに対しても強制執行を申し立てることができます。

たんなる保証人の場合であれば、貸主が主債務者より先に保証人に対し、強制執行をしてきたときは、保証人は、主債務者に先に強制執行してくれと主張できます(ただし、このときには保証人は、主債務者に返済するだけの資力があることを証明しなければなりません)。これを「検索の抗弁」といいますが、これもまた保証人の責任が二次的なものであることからの帰結です。ところが連帯保証人の場合は、この検索の抗弁ができません。やはり、連帯保証人が主債務者と同じ立場で支払義務を負うというところから来る帰結です。したがって、連帯保証の場合、貸主は、主債務者、連帯保証人のうち、強制執行しやすい方(一般には現金にしやすい財産をもっている方)を選んで、そちらから先に強制執行をすることができるのです。

【保証人が数人いる場合】

保証人が数人いる場合(例えば2人とします。)、たんなる保証人は主催務者の債務(例えば100万円とします。)を保証人の数で割っただけの額(100万円÷2人=50万円)ずつを返済すれば良いことになっています。

このように保証人が多くいればいるほどそれだけ保証債務の範囲が少なくなる利益を「分別の利益」といいますが、保証人にはこの分別の利益があるのです。

ところが連帯保証人にはこの分別の利益がありません。したがって貸主は連帯保証人が数人いれば、その各々に対し債務額全額を請求できることになり、返済をうける確実性が増すわけです。

保証人と連帯保証人を同じと考えてる方も多いと思いますが、このようにかなり意味が違いますので、しっかりと理解しておくべきだと思います。また今後連帯保証人に対する責任が民法改正により変わりますので後日ご説明させて頂きます。

《参考となる法令など》

民法452条、453条、456条