以前働いていた職場でこんなご相談がありました。
Q.自宅からの人の出入りが写るように隣家が監視カメラを設置しました。隣家に対して監視カメラの撤去を請求する事はできますか?
【ご相談内容の詳細】
私の家と隣家とは何かと争いが絶えず、隣人は、私の家の出入りを監視するためだと思いますが、隣家の玄関先に監視カメラを設置しました。監視カメラの向きからすると、私の家の敷地は写らないようですが、、私の家へ出入りする者は必ず監視カメラに写るようです。絶えず人の出入りを監視されているようで気味が悪いため、監視カメラの撤去を請求したいと思いますが、はたしてそのような請求は可能でしょうか?
A.監視カメラの撮影範囲が居宅前の私道部分であっても、居宅から出入りする際には必ず通行する場所である場合は、敷地内と同様にプライバシーの保護をうけることができるとし、監視カメラによる継続的撮影は違法であるとした裁判例があります。
【裁判例】
私道をはさんで隣接する家の家人が、隣家の生活騒音等に腹を立てて、すでに3台設置されていた監視カメラに加えて、隣家への人の出入りを監視するため、隣家の玄関や駐輪場が接する私道を撮影する監視カメラを設置して継続的に撮影監視しただけでなく、ホームページにもイニシャル表記で、隣人の行動を非難する記事を掲載していたという事案において、裁判所は、道路は一般の人目に触れる空間であるから、一般的には居宅や敷地内などのようにプライバシーの保護の要請が高い空間であるとはいえないが、本件監視カメラの撮影対象となった私道部分は、隣家の延長空間として隣家の日常生活に密着した空間であるというべきであり、そのプライバシーを侵害するような態様で監視カメラを設置して、継続的に監視することは、隣家の居住者に対して社会通念上受忍すべき不利益の程度をこえる不利益を与えるものであるとして、監視カメラの設置は隣家のプライバシーを違法に侵害するものであるとしました。
監視カメラの設置が、防犯目的や違法行為の証拠収集をする目的であったとしても、他人の自宅をのぞき見るようなことまでは原則として許されないのですね・
《参考となる法令など》
東京地判平21.5.11判時2055・85