最近私が住んでいるすぐそばにマンションが建ちました。
建設中に近隣の方からこの様な質問を頂きましたので、類似事例をもとにご説明させて頂きます。
Q.マンションの建築で眺望が悪くなった場合は?
【類似事例】
私の家は、は、空き地をはさんで海岸に面しており、居ながらにして浜辺の寄せては返す波や沖あいの潮の流れの眺望を楽しむ事ができ、心がなぐさめられます。ところが、この空き地にマンションが建設されることになり、この眺望が失われてしまいます。マンションの建築を止めさせることはできないでしょうか?
A.眺望の享受が社会通念上独自の利益として認められ、かつ眺望の侵害によってこうむる不利益が著しい場合には、眺望を侵害する行為の差止めが認められることがあります。
【眺望権】
眺望は、それが風光明媚といわれるものであるときは、人間の生活に潤いを与えてくれるものですし、観光地の旅館やホテルなどによっては経済的価値のあるものです。したがって、こうした眺望の利益も社会通念上、独自の利益と承認されるだけの重要性を備えているときは、法的保護に価する権利であるということができます。しかし、眺望の利益が法的保護に価する権利として認められるとしても、眺望をさえぎる建築物の建築を常に禁止することができるわけではありません。眺望をさえぎる建築物の建築であっても、その敷地の所有権その他の利用権にもとづいて建築されるものですから、眺望権もそれら利用権との合理的調和の下においてのみ認められるというべきだからです。
【建築の差止め】
そこで、眺望権の侵害を理由に建築工事の差止めが認められるためには、次の要件をみたしていることが必要だと考えられます。すなわち、眺望を侵害する建築物の建築の必要性、目的、加害を回避しうる他の方法の有無などと、眺望の利益の重要性、侵害の範囲、程度、予見可能性などの事情を比較衡量して、眺望の侵害する建築などを差し止めるのが相当であると認められることが必要です。
【裁判例】
猿ヶ京温泉の旅館の建物が赤谷湖の眺望を売りものにしていたところ、隣接地の同業者が他に土地があるのにあえて眺望を害する位置に建築を行うなどとして眺望を害した事件において、旅館の営業を妨害せんとする意図があったものとして、建築工事の禁止が認められています。
しかし、熱海のリゾートマンションの区分所有者が、眺望を阻害する建築物の5階以上の建築の差止めを求めたのに対して、同マンションの部屋の利用度が低いことと眺望侵害の程度も切実でなく、かつ、眺望を侵害する建築物の建築も予想されたという理由で建物の差止めは認められませんでした。
※眺望の利益が経済的にも重要であり、眺望を侵害する側に害意がある場合には、眺望を侵害する建築物の建築の差止めが認められやすいのに対し、眺望の利益が個人的な心理的満足にすぎず、眺望を侵害する行為に害意もない場合には、差止めは認められにくいようですね。
ですので今回のケースは厳しいのではと思います。ちなみに眺望権と日照権は違いますので、日照権についてはまたご説明させて頂きます。