道路位置指定と通行妨害

10年位前の取引でこんな事がありました。

Q.道路位置指定をうけた道路の敷地所有者が道路上にゲートを設置したため通行の妨害となっているのですが、近隣住民は、このゲートの撤去を請求する事はできますか?

A.道路位置指定をうけた道路を通行することが日常生活上不可欠な近隣住民は、道路の敷地所有者に著しい損害を与えるなどの特段の事情がないかぎり、通行妨害行為の排除などを請求することができます。

その前に知らない方もいると思いますので、【道路位置指定】とは何か?を説明させて頂きます。

【道路位置指定】

道路位置指定とは、特定行政庁(都道府県知事の事をいいますが、市町村に建築主事がおかれているときは、市町村長がこれにあたります。)において、政令で定める基準をみたしている私道を建築基準法上の道路として認定することをいいます。

都市計画区域および準都市計画区域内においては、建築物の敷地は幅員4m以上の道路(地下におけるものを除きます。)に2m以上接していなければならないと定められていますから、この要件をみたしていない敷地には建築物を建てることができません。このような場合、私道をもうけて道路位置指定をうけることで、前記要件をみたすことができるわけです。

【道路位置指定と通行権】

道路位置指定がなされると、道路としての通行を確保するために、道路内には建築物または擁壁などを建築することはできません。その結果、道路位置指定をうけた道路であれば、何人も通行できますが、それは道路位置指定の反射的利益にすぎず、通行権が認められるためではないとされています。

しかし、道路位置指定をうけた道路以外に道路がないなど、近隣住民にとって当該道路を通行することが日常生活上不可欠の利益である場合は、道路の敷地所有者が近隣住民の通行利益を上回る著しい損害をこうむるなどの特段の事情がないかぎり、近隣住民は人格的権利として通行権を有するというのが判例です。

つまり、このような場合は、道路敷地所有者は通行の禁止など通行を制限するについて正当な利益を有さず、私法上の通行受忍義務を負うわけです。

【結論】

近隣住民にとって、ゲートが設置された道路以外に通路がないなどその道路の通行が日常生活上不可欠な場合は、道路位置指定をうけた道路の敷地所有者に近隣住民のうける通行利益を上回る著しい損害が生じるなどの特段の事情がないかぎり、近隣住民はゲートの撤去を請求できます。

なお、位置指定道路のうちX所有の道路敷とY所有の道路敷の双方が通路として利用されていたところ、Y所有の道路敷にYが万年塀を設置したため、Xは自動車での通行ができなくなったため、Yに万年塀の撤去を求めたという事案において、裁判所はY所有の道路敷をYは自動車通行の用に供していること、現代社会において自動車により通行することは日常生活上も不可欠のものになっていることを理由に万年塀の撤去をYに命じました。

 

他方、幅が約4mしかなく、かつ通り抜けができない位置指定道路について、当該道路に自動車の乗り入れを禁止することができるとされた例もあります。通行が日常生活上不可欠か否かは、通行の態様(徒歩・自転車によるものか自動車によるものかなど)ごとに判断されることになるものと考えられます。

 

不動産の取引において道についてはトラブルが非常に多いので、しっかり調査しなければなりません。知識のない営業マンがなんの説明もしないで取引され、後でトラブルになるケースも多いので、しっかり知識と経験のある者に依頼しましょう。

《参考となる法令など》

建築基準法42条~44条 最判平9・12・18判時1625・41 東京地判平21・1・30登記情報571・96 東京地判平23・6・29判夕1359・244